企業・一般法人
臼歯部のインプラント、チタンかジルコニアか?3年後の生存率と補綴トラブル🦷
臼歯部の3年比較では、ジルコニアインプラント上のクラウンに小さな欠けが多く、本文では10件、チタン群では2件と報告されています。周囲組織の成績だけでなく、上部構造のトラブルまで分けて説明することがポイントです。
【今回の臨床判断】
「白いインプラントだからよい」「生存率が高いからトラブルはない」と一括りにしない。選択前に、インプラント本体の材料、一体型か分割型か、クラウンの固定方式まで確認します。
ここでいうジルコニアは、骨に入るインプラント本体の材料です。クラウンの材料だけを変えた比較ではありません。
【何を比べた研究?】
42人に、チタンとジルコニアのインプラントをそれぞれ1本ずつ埋入した無作為化比較試験です。同じ患者さんの臼歯部で、クラウン装着後3年まで評価しています。3年時に39人が追跡でき、残存するチタン39本、ジルコニア37本を評価しました。
両群のクラウンは、どちらもモノリシックジルコニア(ジルコニア単体で作るクラウン)でした。インプラント本体だけでなく、構造と固定方式も異なります。
・ジルコニア群:一体型のPURE Ceramic Implant。クラウンを口腔内でセメント固定。
・チタン群:分割型のStandard Plus Implant。クラウンを口腔外でチタンベースへ接着し、スクリュー固定。
いずれもStraumannのシステムです。材料だけを変え、ほかの条件を完全にそろえた試験ではない点が重要です。
【重要な数字】
・3年生存率 チタン100%/ジルコニア94.9%。この差に統計学的な有意差はありませんでした。
・インプラント喪失 ジルコニア2本/チタン0本。
・クラウンのチッピング 本文ではジルコニア群10件/チタン群2件。ジルコニア群で有意に多い結果でした。
・固定に関するトラブル チタン群でスクリュー緩み2件、ジルコニア群でクラウン脱離2件。
チッピングは、クラウンの一部が欠けることです。インプラント本体の破折とは区別します。本文では、研磨で対応できる局所的な欠けと説明され、クラウン交換が必要な破折は両群で認められていません。
なお、チッピングの分類は本文と表3に一部記載の差があります。ここでは件数と重症度は結果本文の説明に従い、割合や「何倍のリスク」といった数字には換算していません。
では、この結果を患者さんへの説明や経過観察へ、どうつなげればよいでしょうか?
【研究から分かること】
✅ インプラントが残っていることと、クラウンにトラブルがないことは別です。生存率が高くても、小さな欠けや固定の緩み・脱離は起こっています。
✅ 今回の一体型ジルコニアシステムでは、クラウンのチッピングを確認する意味があります。一方、チタンの分割型システムではスクリュー緩みも確認対象になります。ジルコニア群の脱離2件は、いずれも再セメント固定で対応できました。
✅ 周囲粘膜の出血、プラーク、ポケット深さ、角化粘膜の幅には、群間の有意差がありませんでした。初期の骨の変化後は両群とも概ね安定し、患者評価や審美性も同程度でした。「ジルコニアなら炎症を防げる」と説明する結果ではありません。
【診療では、何を確認する?】
研究結果を説明に使うなら、「本体が残るか」「クラウンが欠けないか」「固定が保たれるか」を分けます。そのうえで、実際に使う製品の構造と固定方式を確認し、メインテナンス時にはクラウンの欠け、脱離・緩み、周囲組織をそれぞれ観察する、という読み方ができます。
これは本試験の結果を踏まえた確認の考え方です。特定の材料なら再治療を避けられる、と保証するものではありません。
【エビデンスの限界】
単施設・臼歯部・3年の結果で、ジルコニアは一体型の特定製品です。新しい分割型ジルコニアや、すべての製品へ同じ成績を当てはめません。構造と固定方式も異なるため、チッピングの差を材料だけの影響とは断定できません。
また、この試験の人数設定は初期の組織学的評価に基づいており、3年生存率の同等性を証明する設計ではありません。ITIの研究助成、Straumannの材料支援があり、著者らの利益相反も開示されています。
【先生方はどう使い分けていますか?】
❓ メタルフリーを希望する患者さんに、インプラント本体の材料とクラウンの材料の違いをどう説明していますか?
❓ メインテナンスで、クラウンの小さな欠けやスクリュー緩み・脱離を、どのような順番で確認していますか?
「生存率と補綴トラブルを別々に説明している」「装着時の写真と比較している」など、現場で続けやすい工夫もぜひ教えてください。![]()
【出典】
Zuercher AN, Jung RE, Bienz SP, Wenk SA, Thoma DS, Balmer M. Three-Year Follow-Up of Clinical, Radiographic, and Patient-Reported Outcomes for Zirconia and Titanium Implants in the Posterior Region: A Randomized Controlled Trial. Clin Oral Implants Res. 2026 Oct 11. Online ahead of print. doi:10.1111/clr.70176. PMID:42860686.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42860686/
https://doi.org/10.1111/clr.70176
