企業・一般法人
「抜歯予定」の保存困難歯、外科的挺出で残せる?201歯・最長7年の結果🦷
抜歯予定の保存困難歯でも、挺出後の歯冠歯根比とフェルールを確保できるなら、外科的挺出を保存選択肢として再検討できます。
【この研究から得られる臨床判断】
フェルール不足や大きな歯質欠損だけで直ちに抜歯とせず、歯根の強度、挺出後の歯冠歯根比、固定と初期荷重の管理、清掃性を確認したうえで、外科的挺出の適応を判断することが要点です。
【外科的挺出とは】
外科的挺出は、歯根を可及的に損傷しないよう動揺させ、歯の長軸方向に歯冠側へ再位置する方法です。深い歯質欠損を歯肉縁上に出し、修復に必要な健全歯質を確保することを目指します。
フェルールとは、クラウンが残存歯質を帯状に把持する構造です。ただし、この論文の抄録には、適応を決める具体的な残存歯質高さの基準は記載されていません。
【研究概要】
2019年1月から2025年11月までに、フェルール不足や広範な歯質欠損のため保存困難と判断された201歯に、Seif surgical extrusion protocol(SSEP)を行った後ろ向き研究です。追跡期間は6か月から最長7年でした。
主な手順は、歯を軸方向・回転方向に可及的無侵襲に動揺させること、フローアブルCRで固定すること、必要に応じて歯内療法を遅らせて行うこと、軟組織の成熟後に最終修復することでした。
【結果】
- 201歯中193歯が機能的に保存されました。
- 臨床的成功率は96.02%(95%CI:92.3〜98.0)でした。
- 失敗は8歯(3.98%)で、すべて治療後1年以内に発生しました。
- 臨床的・エックス線的に明らかなアンキローシスは認められませんでした。利用できたエックス線像では置換性吸収も認められませんでした。
【失敗8歯から見える回避ポイント】
失敗に関連した状況として、過挺出後の不利な歯冠歯根比、構造的に脆弱な歯根の破折、外傷性荷重を伴う初期の固定脱離、口腔清掃不良が報告されました。
したがって、「どれだけ挺出するか」だけでなく、挺出後に歯根長と支持が十分に残るか、初期固定を守れるか、清掃を維持できるかを治療前から評価することが重要です。
【適応を考える5項目】
1. 歯根に破折を疑う所見がないか。
2. 必要量を挺出した後も、許容できる歯冠歯根比と歯根支持を見込めるか。
3. 最終修復に必要な健全歯質と清掃性を確保できるか。
4. 初期固定中の外傷性荷重を回避できるか。
5. 歯内療法と最終修復を含めた治療計画が成立するか。
【この研究の限界】
単一術者による後ろ向き研究で、比較群はありません。また、全症例で同一のエックス線評価が完備していたわけではありません。そのため、96.02%という数字を、すべての保存困難歯にそのまま当てはめることはできません。
【臨床での結論】
外科的挺出は「保存不可能に見える歯を、どの条件なら残せるか」を再評価するための選択肢です。成功数字だけでなく、歯根の強度、挺出量と歯冠歯根比、初期固定、口腔衛生をセットで判断する必要があります。
皆さんの臨床では、深い歯質欠損歯に外科的挺出を検討するとき、どの所見を最も重視していますか?![]()
【出典】
Seif V. Surgical extrusion with the Seif surgical extrusion protocol: Up to seven-year outcomes in 201 consecutive treatments. J Prosthet Dent. 2026 Oct 1. Online ahead of print. doi:10.1016/j.prosdent.2026.07.036. PMID:42823284.
PubMed: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42823284/
