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仕上げ用NiTiファイル、その前の拡大で負担は変わる?🦷
2種類のNiTiロータリーシステムを使った模型根管の試験では、仕上げ用器具の前に拡大工程を入れると、仕上げ器具にかかるトルクが低下しました。ただし、トルクが下がることと、あらゆる破折への強さが上がることは同じではありません。

【まず結論】
今回の結果から見直したいのは、「仕上げ器具を何にするか」だけでなく、「その器具に入る前に、どこまで形成しておくか」という手順です。指定された前段階の形成を省いてよいかは、仕上げ器具単体の性能だけでは判断できません。
【NiTiファイルとトルクとは?】
NiTiはニッケルチタン合金のこと。今回の対象は、モーターで回転させて根管を形成する器具です。仕上げ用器具は、一連の形成の終わりに使うファイルを指します。
トルクは回転時のねじる負荷です。この研究では、一番大きな負荷である「最大トルク」、負荷の山の平均である「平均ピークトルク」、時間を通して負荷を積み上げた指標である「積算トルク」を調べています。
【比べたのは2システム・3つの順序】
対象はHyFlex EDM OGSF(HEDM)とRACE EVO(RAVO)。規格化したレジンブロック内の模型根管を、次の3つの順序で形成しました。
① 仕上げ器具から直接形成
② 初期拡大を行ってから仕上げ
③ 初期拡大・中間形成を行ってから仕上げ
ここでいう「初期拡大」は、研究で比較した先行形成の工程です。手用ファイルによるグライドパス確保だけと同じ意味ではありません。抄録では、各段階の全ファイルサイズや具体的なモーター設定は確認できません。
【結果①:仕上げ器具の負荷は、両方で下がった】
前段階の拡大器具を使うと、両システムで、仕上げ器具の最大トルク・平均ピークトルク・積算トルクが有意に低下しました(p<0.05)。「仕上げ器具へ直接進むか、先に形成するか」で、同じシステムの仕上げ器具にかかる負荷が変わった点が、今回の具体的な学びです。
一方、全工程を合計した積算トルクは、HEDMでは先行形成を入れた2群で低下しましたが、RAVOでは順序間の有意差がありませんでした。仕上げ器具だけの負荷と、手順全体の負荷は分けて読みます。全工程の積算トルクは、治療時間や削除量を表す数字でもありません。
【結果②:曲げ疲労とねじり強さは、同じ動きではなかった】
形成後の器具について、曲がった人工根管内で回転を繰り返す「繰り返し曲げ疲労試験」と、「ねじり抵抗試験」を行っています。前者は曲げが繰り返される負担、後者はねじられる負担に対する性質を見るもので、異なる評価です。
HEDMのFinisherは、先行工程を増やした条件で繰り返し曲げ疲労への抵抗が有意に高くなりました(p<0.05)。しかし、最大ねじり強さは低下し、変形角は増加しました。「疲労抵抗が高いから、ねじりにも一律に強い」とは読めません。
RAVOの30/.04ファイルでは、繰り返し曲げ疲労への抵抗に順序間の差はありませんでした。ねじり試験では靱性だけに差がありましたが、抄録にはその変化の方向が記載されていないため、向上・低下は断定しません。
【臨床で確認したいこと】
✅ 仕上げ用器具の前に行う工程を、使用システムの添付文書・推奨手順で確認する。
✅ 工程を省略する判断では、仕上げ器具の種類だけでなく、そこへ至るまでの形成を確認する。
✅ 「トルク低下」「曲げ疲労への抵抗」「ねじり強さ」を、ひとまとめに「破折しにくい」と言い換えない。
今回の結果は、前段階の形成が仕上げ器具の負荷を変えることを示しています。だからといって、研究の順序をそのまま全症例へ追加したり、必要以上に拡大したりする根拠ではありません。製品ごとの指定手順と根管の条件を踏まえて判断します。
【エビデンスの限界】
レジンブロック内の模型根管を使った実験です。患者さんでの器具破折率、治療時間、歯質の削除量、治療成績は評価していません。疲労試験の35°という曲率も、臨床での安全な角度や適応基準を示すものではありません。
本記事はPubMedと出版社が公開している抄録に基づきます。具体的なトルク値・低下率、試料数、破折までの回数などは公開抄録に記載がないため、数値グラフや推定値は示していません。
【先生方はどうしていますか?】
❓ 仕上げ用NiTiファイルの前段階で、必ず確認している手順は何ですか?
❓ 器具に負荷がかかったとき、仕上げ器具の選択と先行形成のどちらを見直していますか?
使用しているシステムや、工程を省かないための工夫など、先生方の経験をぜひ教えてください。

【出典】
Jo H, Kwak SW, Kim JH, Ha JH, Kim S, Kim HC. Effect of Preceding Enlargement Steps on Real-Time Torque Generation and Post-Instrumentation Mechanical Properties of Rotary Nickel-Titanium Finishing Instruments. J Endod. 2026 Oct 12:S0099-2399(26)00528-5. Online ahead of print. doi:10.1016/j.joen.2026.10.001. PMID:42863659.
DOI:10.1016/j.joen.2026.10.001
