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総義歯の印象採得に使う個人トレーでは、口蓋正中部の追加リリーフを大きく取るほど精度が上がるとは限りません。今回の模型実験では、追加リリーフ量が増えるほど三次元的な偏差も増えました。

無歯顎上顎の個人トレーを設計するとき、口蓋正中部にどの程度のリリーフを付与するか迷うことはありませんか?
粘膜への圧を避ける目的でリリーフを設けても、印象材の厚みが増えることで重合収縮の影響が局所的に現れる可能性があります。
【今回の研究】
完全無歯顎の上顎模型と個人トレーをデジタル設計した模型実験です。
トレー全体には一様に1.0 mmのリリーフを設定し、そのうえで口蓋正中部への追加リリーフを0 mm、1.5 mm、3 mmの3条件で比較しました。4種類の弾性印象材で印象採得し、超硬石膏で模型を製作。三次元表面の平均偏差と最大絶対偏差を評価しています。
ここでいう「0 mm」は、トレー全体のリリーフがないという意味ではなく、口蓋正中部への追加リリーフが0 mmという条件です。
【結果】
✅ 4種類すべての印象材で、追加リリーフ量が0 mmから1.5 mm、3 mmへ増えるほど、平均偏差と最大絶対偏差が増加しました。
✅ 追加リリーフ3条件の差は、すべての印象材で統計学的に有意でした。
✅ 0 mmと3 mmの比較では、すべての印象材で偏差が有意に増加しました。
✅ 平均偏差は、どのリリーフ条件でも4種類の印象材間に有意差がありませんでした。
✅ 最大絶対偏差の材料差が認められたのは、1.5 mm条件のみでした。
なお、抄録には各条件の偏差量そのものや、4種類の印象材の商品名・材料名の詳細は記載されていません。
【結論:臨床でどう考える?】
今回の条件では、口蓋部の追加リリーフを大きくするほど、印象材の重合収縮に関連した局所的な寸法変化が大きくなりました。
そのため、印象精度だけを優先するなら、口蓋正中部への追加リリーフをむやみに大きくせず、必要最小限に管理するのが今回の研究から導ける実務的な判断です。
一方、粘膜への圧を避ける必要がある症例では、粘膜所見を踏まえて別途判断します。「追加リリーフは常に不要」という意味ではありません。
ただし、この研究は模型上の実験です。患者の粘膜の被圧変位、唾液、辺縁形成、印象圧、義歯の適合や臨床成績までは評価していません。「追加リリーフ0 mmがすべての症例で最適」と結論づけることはできません。
【先生方はどう設計していますか?】
❓ 口蓋正中部のリリーフ量は、粘膜所見や使用する印象材によって変えていますか?
❓ 印象材の厚みを一定にするために、個人トレー設計でどのような工夫をしていますか?
症例ごとの判断基準や、印象精度を安定させるための工夫をぜひ教えてください。
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【出典】
Journal:Journal of Prosthodontics
Original Article:Effect of tray relief amount and impression material type on dimensional accuracy of complete denture impressions.
Authors:Minji Sun, Jae Hoon Lee, So Hee Kim, Jihoon Shin, Jaeyoung Kim
Publication Date:2026-Sep-07
DOI:10.1111/jopr.70230
PMID:42703698
PubMed:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42703698/