"歯科医師が鍛えるべき3つの場所"とは ー 歯周病専門医・指導医の牧草一人先生【Dr's Interview#09】前編
ーーー歯科臨床の本質を学ぶ上で、教科書とのギャップを埋める"教育"とは何だろうか?
歯周病治療のエキスパートである牧草歯科医院の牧草一人先生に、歯科医師・歯科衛生士としての基本姿勢、歯科業界の課題などについてお話を伺った。

牧草先生:
「実臨床と国家試験対策をメインとした教科書には、非常に大きなギャップがあります。歯科臨床を面白くするのに必要なことを、歯科医師・歯科衛生士に学んでいって貰いたい。」
教育者・臨床家として、日本のみならず世界で活躍する牧草先生が監修した、
2025年12月発刊の『新人・復職DHのための丸わかり歯周治療』(クインテッセンス出版)。
この本は、教科書的な書籍と実際の臨床との隙間を埋める、歯科衛生士向けの歯周治療ガイドブックだ。歯周病の基礎知識から臨床で役立つ応用まで、イラストを交えながら分かりやすく解説されている。

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|1. 歯周病専門医として40年間守り続けてきたもの
ーーー牧草先生は大学卒業後、すぐに歯周病学講座に入局。
現在までの約40年間、一貫して歯周病と向かい合ってきた。
歯周病専門医としての基本姿勢や担う役割について、どのように考えているのだろうか。
牧草先生:
「歯周病は、45歳以上の日本人の50%以上が歯周病患者という状況下で、ギネスブックでは患者数第1位に認定されている病気です。にもかかわらず、日本国内で歯周病専門医が不足していることは深刻な問題でしょう。」
「歯周病専門医として、1本でも多く患者さんの歯を助ける治療に取り組んできました。"歯周病専門医でも残せない歯なら、誰が残せるというのか"という強い気持ちです。」
「それでも、すべての歯を救出できるわけではありません。つまり、患者さんの歯を抜かなければならない時のセカンドベストとして、インプラントがあると考えています。」
「一人でも多くの歯科医師・歯科衛生士に歯周病治療を学んでいただくため、私が開催するセミナーやJIPIを通じて、全国で歯周病治療の指導を続けています。」
|2. "患者にとっての正解"を出すために
ーーー個々の患者さんに対して、正解となる治療を提供するためには歯科医師は何をすれば良いのでしょうか?
牧草先生:
「歯科医師は3つの場所を鍛える必要があります。頭と腕と心の3つが、歯科医師が鍛えるべき場所です。」
「豊富な知識を身につけ、患者さんとコミュニケーションをとるために、まず頭の中を鍛える。頭で考えたことを実際に行うためには、腕を鍛えることが必要不可欠です。そしてもうひとつ、絶対に鍛えないといけないのは、患者さんを想う心。頭と腕と心の3つをバランスよく鍛え続けて治療を行っていけば、患者さんからの信頼を得ることができます。」
「世界中に蔓延し、なお放置されている病気が、まさに歯周病です。歯周病を体系的に学び、きちんと実践していけば、歯科医院同士で競合し合うとは、全く考えていません。皆で勉強し、高め合っていけば良いのです。」
「経営に悩み、コンサルにお金を払って相談する暇があるなら、患者さんのことを1秒でも多く考え、より良い治療を実践しましょう。それが患者さんに伝わり、患者さんが人を呼び、良い循環が生まれます。患者さんが喜ぶことで、スタッフにとっても働きたくなる歯科医院になるでしょう。」
ーーー目の前の患者さんを大事にすること。
それが、牧草歯科医院の経営方針だという。
牧草先生:
「医療の世界においてエビデンスはもちろん重要ですが、患者さんの気持ちを考慮せず病気の治療法を説得することは、医療とは言えません。患者さんの気持ちを汲み取ることが、何より大切です。」
「医療の正解は、ひとつではありません。複数ある正解の中から、その患者さんに最もふさわしいものを見つけるのが、我々の仕事だと思っています。」
|3. 10年単位の長期的視野で自身の治療を評価する
ーーー牧草歯科医院では、歯科医師や歯科衛生士の求人を出すことがほとんどなく、就職希望者は、内定者のキャンセル待ち状態が続いているという。
そんなことが実現可能なのだろうか?
牧草先生:
「当院でいちばん古い先生は、開業時から現在まで働いています。自分のクリニックを経営しながら、月2回は当院での診療を続けているのです。当院の勤務医は皆、自分の患者さんは一生診ていきたいと考えているようです。」
「また、広告出稿やSEO対策など、当院では全然していません。しかし、治療した患者さんが新しい患者さんを紹介してくださるケースが多く、目の前の患者さんの歯を大事にしてきた結果、自然と患者さんが増えていきました。」
ーーー1990年開業から、牧草歯科医院の患者数はすでに1万8千人以上。
広告なしで毎月平均40人以上の新患を受け入れ続けてきたことになる。
牧草先生:
「当院には、電話帳ほどの厚さのカルテが数多くあり、10年どころか30年以上、当院を利用している患者さんが少なくないのです。自分が行った治療が正解だったことを実証するには、治療した患者さんの20年後、30年後を後世に見てもらうことが一番です。」
「"治療が無事に終わって1年経ったので、あとは知りません。"これでは、その治療が本当に正しいかどうかは判断できませんよね。私は治療の評価には、10年以上の長期的な視野が必要だと考えています。」
|4. 実臨床と教科書のギャップを埋める実践的教育法
ーーー歯科衛生士の育成を願い、教育の一助とする書籍『新人・復職DHのための丸わかり歯周治療』を牧草先生が構想し始めたのは、3〜4年前。クインテッセンス出版社の編集者であり、歯科衛生士でもある加藤氏と意見を交換しながら準備を重ねていった。
牧草先生:
「日本全国に200近くもある歯科衛生士養成学校のアンケート調査結果を集計し、ヒアリングも行いました。そうした活動から得たデータに基づいて、今回の書籍を具体化していったのです。」
ーーー牧草先生の熱意は、真に求められている教育・価値を提供するために現場のアンケートをもとに課題を分析した点からも伝わってくる。共著は、歯周治療についての基本的な考え方を牧草先生と共有している方々に依頼したそうだ。
牧草先生:
「私が主催しているJIPIという歯周病・インプラントのスタディーグループがあります。そのセミナー受講経験者の中から、日本歯周病学会の専門医あるいは認定医の資格保有者、認定衛生士を前提に人選をしました。2020年に発行した『基礎と臨床がつながる歯周解剖』(クインテッセンス出版)を歯科医師向けとし、その中から衛生士向けトピックを抽出しています。」

共著者の2/3以上は、現役でJIPIセミナーの講師を務めている方々で、
監修者として苦労したことは何一つなかったそうだ。
それほどまでに、共著者の方々が専門性を存分に発揮し、充実した内容に仕上げてくれたからだ。そんなJIPIセミナーはいつも満席、申し込みも次年度以降までキャンセル待ちだ。
まだまだ語り尽くせない牧草先生の臨床への想い。
後半のDr's Interviewでは、"歯科医院の経営強化につながる重要分野"、"競合医院の増加さえも地域活性化につなげた熊本県の事例"などを、お届けします。
※後編に続く( 次回公開 )
▶︎"歯科医院の収入増に繋がる取り組み" ー 歯周病専門医・指導医の牧草一人先生【Dr's Interview#09】後編
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牧草歯科病院 院長:牧草 一人
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医療者TERRACE 編集部
山崎 康弘
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